身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「俺はまりあといたいし、陽鞠といたい」
「待って、修二……」
「まりあだけが目的だと、本当に思っているのか?」

私だって、もう薄々わかっている。少なくとも、今現在の修二はまりあだけがほしいのではない。私との幸せだった日々を思いだしている。私がそうであるように。

約一ヶ月の修二との日々、半月の同居、私はけして嫌じゃなかった。この日々があと数日で終わると思うと、惜しいような寂しいような感情があるのは確かだ。

だけど、私がどん底で選択した三年前を、こんなに簡単に有耶無耶にしていいのだろうか。私は修二に頼らず子どもを育てようと決めたのだ。
ここで勢いに飲まれてやり直して、もし駄目だったとき、今度はまりあを深く傷つける。
答えに窮して押し黙っている私。じっと真摯に私を見つめる修二。

まりあは私たちの会話がわかるはずもなく、修二の腕の中できょとんとしている。
その時だ。私のスマホが着信を知らせて鳴りだした。なんだろう。
見れば着信は母のスマホからだ。

「なあに、お母さん」
『陽鞠、あのね。ちょっと大変なことになっちゃって』

電話の向こうの母は切羽詰まったような声をしていた。

「え?」

私は聞き返し、母の言葉に愕然とした。



< 95 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop