夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「どうして?」

明日菜が信じられない気持ちはわかる。しかし騙されてるっていっても、私はホテルに連れ込まれたわけでも金銭を要求されたわけでもないのだ。ただ求婚されただけで、御曹司の彼に私から奪いたいものなどなにもないはず。

「そもそも彼、本当に御曹司なの?」

「本当よ。名刺をくれたし、神代製薬にいた母も彼を知ってた」

あの日帰ってからすぐに母に確認した。

『神代零士って、社長の息子さんのこと? 退職してから社内パーティーで一度だけ見たことあるけど、ハンサムでつり目の男の子よね? え? 彼と付き合うことになった? ……凛子! 逃しちゃダメよ! 絶対に結婚までこぎ着けなさい!』

母があそこまで大声を出した姿を初めて見たが、一応、これでお墨付きになったのだ。だから疑いの気持ちはすっぽりと抜けていたんだけど。

「ふーん。多少繋がりがあるってわけね。ますます怪しい」

明日菜はメガネをキランと光らせる。
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