2番手の俺がキミのヒーローになる物語
放課後になると奈緒が駆け寄ってきた。
「駅前に美味しいクレープ屋さん出来たらしいから食べるの付き合って」
「部活は良いのか?」
「月木だけ参加させてもらうことになってるから今日は無し」
「なるほどね」
「ほら行くよ!早く早く」
楽しそうに跳ねながら歩く奈緒の後ろについていく。
校舎から外へ出たところで俺は奈緒に話しかけた。
「部活どうだ?」
「楽しいよ。なんと言っても真白先輩がいるからねぇ」
ニヤけてる顔に胸が切なくなった。
「...本当に好きなんだな」
思わず言ってしまった言葉。囁かれたその言葉は奈緒の耳に届いていた。
「うん、好き」
短い言葉。それは俺の心を痛めるのには十分な言葉だった。
2番手役だったらここで応援の言葉を言うのだろうか...?俺はどうしてもそれだけはいえなかった。
何も言えずに少し歩いているとクレープ屋についた。
5人ほど並んでいるだけだっためすぐに買えそうだった。
「蓮都何にする?私はイチゴ」
「あー、じゃあバナナで」
そうして2人で買い、並んで食べる。
「ん〜美味しい」
「あぁ、うまいな」
頬張る奈緒の口元にクリームが付いていた。
「ついてる」
俺はそっと手を伸ばしクリームを取って食べる。
「わぁ今の彼氏みたい」
俺の胸がドクンと鳴った。
「は、はぁ!?」
「へへっ。まぁ蓮都が彼氏なんてないけど」
流れるように俺の心を刺す奈緒の言葉に泣きそうになるのを堪えた。
「...俺も悪くないと思うけどな」
「んー、でもやっぱ蓮都は彼氏っていうより幼馴染だからなぁ」
幼馴染は近すぎるから恋愛対象にはならないということが創作においてもあることを思い出す。俺は小さく溜息をついた。
「でもやっぱ蓮都がいないのは考えられないな」
奈緒は小さくそう呟く。
「え?」
「今日のグループも一番に蓮都と組もうって思ったんだよね。きっとこれから先何があっても蓮都がいるのが当たり前で傍にいて欲しい存在であることには変わらないと思う」
真っ直ぐ言う奈緒に驚きつつ、喜ぶ気持ちが隠せなかった。
「もし俺が奈緒のこと...」
「ん?」
好きだって言ったらどうする?と言えたらどれだけ良かったか...。
いつも一歩踏み込む勇気を出せない俺を嘆いた。
「いや、なんでもない」
「ふふっ。変な蓮都」
そしてクレープを食べ終わった俺たちは家へと向かった。
「ありがとね一緒に来てくれて」
「まぁ奈緒に振り回されるのはいつものことだからな」
「蓮都だけだよ。こんなワガママ言えるの」
ひまわりのような笑顔を向ける奈緒。
何も考えてないことは分かっていたが、俺だけという言葉に思わず顔が綻ぶ。
「どうしたの?」
「...いや」
俺は奈緒の頭を撫でる。
奈緒は嬉しそうにへへっと笑った。
俺は心底彼女のことが好きなのだと分かった。
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