最後の一夜が授けた奇跡
病室のノックすらせず入ってきたその人を見て、私はすぐに誰だかを思い出した。
その石川睦美という人は律樹の許嫁の石川財閥の娘さんだ。

「あなたが律樹さんをたぶらかした女ね。」
ひと言目からきつい。

「あなたに言いたいことがあって」
急に要件を言い始めたその人はきつい香水のにおいを病室に漂わせる。

つわりで嗅覚が敏感になっている私にとってはかなりつらい。

真っ赤な口紅と、大きなアクセサリーを全身につけたその人は見るからに・・私とは生まれ育った世界が違うことを感じた。

私はぼさぼさの髪を手でとかしながら話を聞く。

「あなたのせいで律樹さんがどんな思いをしているか知ってるのかしら?」
「・・・?」
私が話す間もくれずにその人は話す。
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