ブエノスアイレスに咲く花

「あーもしもし俺俺どこ?」

相沢は春のやわらかい日差しを浴びて
左手で伸びをし、右手にケータイを持って話していた。

「あーはいはい、じゃあ学食集合ね」

そう言って通話を終えると僕のほうを向いた。

「奈津美?」

「そそ」

僕が尋ねると相沢は短く答えて、
少しゆっくりと歩いた。

少し大股でわざとつま先を伸ばして歩くその姿は、
バレエを踊る彼の姉を思い出させた。
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