ブエノスアイレスに咲く花

2008年10月1日水曜日、雨。

ケータイのアラームを切ると
新着メールが数件来ていた。

母親、サキ、大学の後輩やバイト先の女の子、
一番0時に近いのは、河野だった。

時差という障害を越えてのあの男のマメさと、
「めんどくさい」という口癖は対極にあると思う。

皆、内容は【誕生日】に関するものだったけれど、
一番あたらしい相沢からのものには、

『昼から3限までは例の教室?
 演習の課題が終わってないから、
 みせておくれ、今日はスロットおあずけです』

と書いてあって、実に相沢らしかった。

僕はケータイを閉じて起き上がり、
テーブルの上にあったメンソールの箱を開けると、
残りは3本になっていた。

ラ・エスタンシアのライターでそれに火をつけ、
大きく肺に吸い込むと、
寝起きの体は耐え切れず、少し眩暈がした。



僕は、21歳になった。
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