婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
おまけ モモと大地
「モモちゃんはお人形さんみたいね」
「どんなお洋服を着ても似合うわ」

 かわいい、綺麗、美人。そう言われるのが嬉しくて、もっともっと言われたくて……中学生のときにアイドルグループのオーディションを受けた。結果は一発合格。すぐにグループのセンターにも選ばれた。芸能界は大変だって、誰もが言うけれど……モモにはちっとも大変じゃなかった。かわいい衣装を着て、得意のダンスを踊る。ただそれだけで、誰もが褒めてくれた。アイドルはモモの天職だった。

 だけど、彼女は知らなかった。アイドルを一生の職業にするのは難しいということを……。

「若手メンバーも育ってきたし、モモもそろそろ次を考えないとな」

 二十三歳のバースデーパーティーの日、突然プロデューサーにそう言われた。地元の友達も、ほとんどみんな就職して社会人になっている。世間ではもう大人とみなされる年齢なのだろう。

「卒業ってことですか?」
「もちろんすぐにってわけじゃないよ。モモの卒業ともなれば、イベントにコンサートに準備に一年はかかるからな。けどまぁ……ずっとアイドルってわけにもいかないだろう」
「はぁ……」

 そう言われてもピンとこなかった。モモはアイドルを芸能界へのステップにと考えていたわけじゃない。アイドルになるのが夢だったのだ。その先のプランなんて、なにもない。
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