ストックホルムの恋人
プロローグ

出会い

"死ぬほど好き。"




こんな歯の浮くような言葉。
私には縁のないものだと思っていた。



生まれてから18年。
社長令嬢として何不自由なく暮らしていた私が親元を離れあの人との共同生活を始めたのは3週間も前のことだ。




シェアハウスでの生活を通して元々接点のなかった男女の間に恋心が芽生えていくテレビ番組を見た事があった。

まさにそのような出来事が私の身にも起こったのだ。








最初は怖い人だと思った。
こんな人と一緒に住んでもいいものか悩んだものだ。
実際何度も家を出ていこうかと思っては、その度に止められて...を繰り返していた。




好きになったきっかけは、これまで自分で料理もろくにした事がなく空腹だった私に食事を用意してくれたことだった。





決して手の込んだものではなかった。
しかし、空腹は最高の調味料だとはよく言ったもので、この時食べた料理はこれまで家族で行ったどんなレストランの料理よりもおいしく感じた。




その日以来、彼が時折見せる優しさに触れる度に心を奪われるようになった。
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