誓いのstatice



〜マスターの回想〜


麻耶ちゃんとの約束を果たす為に
静岡から戻ってきた俺は
絵里に電話で『statice』に
来てもらう様に頼んだ



「……ッ」
(俺の"特別な存在"はずっと変わらず麻耶ちゃんだけだ)

カウンター越しに立つ俺は
一枚の写真を握りしめ覚悟を決めた




カラーン♫


「優人」

絵里は店の扉を開け
俺の元に駆け寄って来る



「悪い、呼び出して…
直接、絵里に話しておきたかったんだ」



「…………」


絵里はカウンター席に座りながら
俺を見つめてくる


「何よ、かしこまって」



「…ッ……ごめん…俺は絵里の気持ちに答えられない」




俺は絵里に頭を下げる




「なんで…ッ?」


絵里の顔から笑顔が消えた

「ごめん…俺は麻…ッ」


ゆっくりと頭を上げ
愛する人の名前を口にしようとした瞬間
絵里の声と重なった


「なんで…ッなんで私を見てくれないの?」



涙を浮かべながらギュッと
紫色の押し花を握りしめていた



「昔からずっとそうだった…ッ」


「………」



「たった一度やニ度しか会った事がない女の子の事が好きだって…」


「………」




「なんで…ッ?私はずっと優人の隣りにいて
こんなに優人の事が好きなのに」



「………」





「なんで…⁉︎どぅして私をみてくれないの?」




「ごめん」

謝る事しかできない俺はゆっくりと頭を上げる
俺は絵里にかける言葉が見つからないでいた

「……ッ…」

(なんとなく絵里の気持ちに気付いてた…絵里が俺を好きでいてくれたことも…アメリカに留学した理由も……俺って最低だな)




「……絵里は俺の為にアメリカから戻ってきたんだよな…」




「…優人から逃げてアメリカに行った事…ずっと後悔してて…でも…おばさんが倒れたって聞いた時、私はやっぱり優人のことが好きで…優人の隣で支えたいと思ったのッ」




「………」







「なのにッ…戻ってきたら優人の隣にはあの子がいる」

握り締めている押し花を見つめ涙を流す絵里





「押し花にして持っててくれたんだな、ありがとう」

(俺が小さい時、お袋にプレゼントできなかったスターチスの花を返しに行った時、絵里が欲しいと言ってあげた花だ)

「……ッ……」




「…でも、ごめん。絵里の気持ちには答えられない」



「……ッ」



「麻耶ちゃんは俺にとって一番大切な子だから」



「……ツ」


絵里は何も言わずにその場を立ち去った



〜回想終わり〜

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