誓いのstatice



広々とした店内には数人のお客さんしかおらず、
私達は窓側の席に座りホットココアを注文した




「…………」



喋る言葉が見つからず
窓から見える景色を眺めていた私に
深瀬さんは頭を下げた




「ごめんなさいッ」


「……ッ⁉︎…」




深瀬さんのいきなりの謝罪に
私は戸惑ってしまう




「私、入社してからずっと
水野くんの事が好きだったの…」


「………ッ」



深瀬さんは俯いたまま話し続ける


「でも、水野くんは大川さんの事が好きで
私はあなたに、ずっと嫉妬してた」



「…………」

「だから、社内でのイジメも
気づかないふりをしてたし、
あなたにあんな酷いメールを送りつけた」



「……ッ」



私はその場に座っている事で
精いっぱいだった





「でも私の恋も終わった。
あなたには敵わなかったわ…」



深瀬さんは顔を歪め
辛そうな表情をしていた




「会社の忘年会があったあの日…水野くんからまたあなたの事を相談されたの…」




「…………」




「いつも酔わない彼が泥酔状態になって…
それだけ、追いつめられてるんだって…」




「…………」





「…だから今がチャンスだと思ったの、どんなことをしても水野くんを手に入れるって思った」




私は勇樹を追い詰めた罪悪感で
深瀬さんに返す言葉が見つからない



「でも…手には入らなかった」


「…えッ…⁉︎」



私は深瀬さんを見る



「私達には何もなかったの…」



「寝言で“麻耶”って
ずっとあなたの名前を呼んでるんだもの…」



「………」



「水野くんはいつもあなたの事しか考えてないわよ、私には彼とあなたの間には割り込めないって思ったら悔しくて…だから、寝てる彼の裸写真を送りつけたの…」




「何もしてないのって勇樹は…知ってるんですか?」




「…知ってる。あの後、水野くんに全てを話して謝った」




(勇樹は私を裏切ってなかったんだ…)





「話はそれだけよ、付き合わせて悪かったわね」



深瀬さんは席を立ち帰ろとしたけど
ふと何かを思い出したかの様に
呆然としている私に話しかけた





「あ、最後に一つ。“俺はあいつがいるから頑張れるんだ。これから先、俺は麻耶と幸せな家庭を築きたいんだ"って言い切ってたわよ、そこまで愛されるなんて、あなたは幸せ者ね」


立ち去る深瀬さんの後ろ姿を見ながら
勇樹からの愛を再確認した



(勇樹がそこまで私の事を
大切に思ってくれているなんて…)



私はカフェを出て家までやるせ無い気持ちで歩いていた


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