こいつ、俺の嫁。ーAnother my wife storyー
耳から首筋へと唇が伝っていく。
それがくすぐったくて身体を捩るけど、いつの間にか背中に回された奴の腕がそれを許すはずもなく。
唇は鎖骨をなぞるように這っていき、一瞬チクリと痛みが出て離れていった。
これで終わりかと思えば奴の濡れた唇が妖艶に弧を描いて、親指で唇をなぞられる。
「…この状況でも言わねぇならその口、言いやすくなるように塞いでほぐしてやろうか?」
「…っ!」
聞いたことのある言葉に驚いて目が丸くなる。
これは中学の時に奴の試合を観に行った後に言われた言葉だ。
あの時は素直にバレーをしていた奴のことを"かっこいい"と言うことができなかった。
言ってしまうと何かが変わってしまう気がして怖かったから。
でも今は違う。
こうしてずっとこじらせてきた恋愛を掴んで、恋人になった奴が前にいる。