【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

もう、この身を預けるだけ。ふっとそこで意識を手放した。 いつもいつも勇気が少し足りなかった。この20年間の人生の中で、欲しい物を素直に欲しいと言えずに手放してばかり。

死ぬ時人生がフラッシュバックするらしい。
頭の中、様々な映像がゆっくりと流れた。

お母さんの顔。義理の父親だった人の顔。 初めて恋をした中学生の彼。

友達だと言って、私を裏切って行った友人。 私を捨てた昔の男。

 思えば、ろくでもない人生を送ってきたもんだ。 裏切りの連続の中で、欲しい愛はこの手の中すり抜けていくだけ。

人魚姫さえ、最後には愛する人を見つけたというのに。 だけどどうしたって悲しい結末。これ以上悲しみを背負う前に、この人生の幕引きをした方が良い。


最後の映像は、顔も見えぬ誰かが私へとくちづけを落とす姿だった。

柔らかい唇の中に少しだけの熱を残し、そして消えて行った。 あなたは誰…?人生最後の映像が顔も見えぬ知らない人だなんて私らしいっちゃ、私らしい結末だけど。

―――…
――――…。

コポコポコポコポ――
次に聴こえたのが一定のリズムを規則的に刻む心地の良い水音だった。

先程まで耳をついて離れなかった、静寂の中にありながらもどこかもの悲しく力強い波音とは違う。

同じ水の音でもここまで違うのか。 ゆったりと心地良く鼓膜を揺らす水音に耳を澄ませながら静かに瞼を開ける。

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