【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「智樹さんのご両親はッ……」
ぴたりと動きが止まり、こちらを見上げる。少しだけ顔が強張った気がする。けれどもゆっくりと話し始めた。
「朔夜達は知らないが、俺は両親の顔を知っているんだ。
とはいっても6歳位だったから、余り記憶はない。 普通の家庭だと思っていた。父が余り家に帰らないだけの。
幼い頃はお父さんは忙しいの、と言われて納得はしていたがある時期を境にぱったりと家に寄り付かなくなってね。
その後直ぐに母は自殺した。」
「じ…さつ?」
ごくりと生唾を呑む。
まさかここまで似ている境遇だとは…。
だからなの?私の境遇を知っている智樹さんは、自分と私を重ねて同情をしているというの?
それが同じ傷で、欠けた何かなの?
「まりあと一緒だろう。だから俺は君の気持ちをきっと世界一分かってあげられる」
握り締めた手の力が強くなる。 それは怖い位重なった過去の傷と似ていた。
「お父さんは?その後…」
「元々母とは違う女性と付き合いがあったらしい。 後に発覚した事だったけれど
今は知らない。生きてるのか死んでるのかさえ。けれど母さんが自殺した後あいつは俺の前に姿を一回も現していない。」
智樹さんの眉間に皺が深く刻まれていく。 この人は今も過去に囚われている人だ。