転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「リーシャ! 無事か! 本当、大変なことになってしまったな……」

 三人の兄達のうち、ルジェクとノルベルトは割と楽天家だ。どうにかなるだろうと思っている節もある。だが、ヴィクトルだけは違う。
 かつて、アイリーシャが誘拐された時のことが、彼には深い心の傷になってしまっているらしい。

「お兄様、私なら大丈夫だから……お仕事に戻ってちょうだい」

 近衛騎士なのに、王宮の警護を放り出して研究所に押しかけているのはあまりよくない気がする。ヴィクトルは剣呑な目つきになった。

「聖女だぞ? 神殿だって、お前を利用しようとしているんだろう。きっと、ここも安全じゃない。俺に任せておけ」
「利用なんてされないわよ。呪いを解除しただけだし――それに、ルルもいてくれるし」
「聖獣なんか、伝説の存在と思われていたんだぞ! ルル狙いのやつもいるかもしれないし、ルルだって危ない!」

 正式に契約したルルは、今は子犬の姿のままだが、その気になれば元の大きさに戻ることができる。
 毛並みは素晴らしく、思う存分モフっているのだが、ルルだけでは護衛としては不満と言うことなんだろうか。

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