私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「悪い。もう少し我慢してくれ」
さらに強く念じて結界が完全に凍ると、思い切り蹴りを入れた。
ガシャンと大きな音を立てて崩れる結界。
医務室の中にいたのは、ベッドに横たわる撫子と背広を着た長身の男性。その男性の頭には角がひとつあり、額には緊箍児が嵌められていた。
頭の中で見た鬼。
この鬼こそ、赤鬼の一角。
「撫子から離れろ!」
鬼に向かって叫ぶが、鬼は離れず俺を見て口角を上げた。
「人間が俺の結界を解くとはな。お前が、紅羅をやったのか?」
金色に輝く鬼の目。
その目からは憎悪を感じた。
「ああ。そうだ。大人しく妖の世界にいれば、死ぬことはなかったのにな」
冷淡に告げれば、鬼は傲慢な態度で言い返す。
「ほお。人間如きが生意気なことを言うな。しかも、私は赤鬼の煌だぞ」
「その鬼が人間に操られているとはな。その緊箍児は人間に嵌められたものだろう?」
煌の頭の金の輪っかを見てそんな皮肉を口にすれば、鬼はハハッと笑った。
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