私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「それが丸薬はあとふた粒しかないんです」
「たったふた粒だけ?」
だが、尊の説明によると、実際に手元に残るのはさらに少なかった。
「でも、ひと粒は隼人のお父さんに渡すので、残りひと粒になります」
そう言えば、隼人のお父さまは赤鬼に怪我をさせられたんだっけ。
欲張ってはいけないわよね。みんなの怪我が治ったことを喜ばなきゃ。
それに、隼人だってお父さんのことは気がかりだったはず。
「隼人のお父さん、すぐに良くなるといいね」
笑顔で声をかけたら、彼はフッと笑った。
「殺しても死なないような親だけどね。まあ、そんな訳で俺は一回家に帰るよ。出来れば嫁としてお嬢ちゃんを連れて行きたかったけど」
「もう二度と戻って来なくていいわよ」
フフッと笑って返せば、隼人はいじける振りをした。
「撫子ちゃん、酷い」
こんなやり取りも最初は呆れたものだが、今は楽しい。
「嘘よ。また修行しに戻ってらっしゃい」
クスッと笑みを溢す私に、また彼が「撫子ちゃん、やっぱり、大好き〜!」と抱きつこうとして、バシャンと結界に弾き飛ばされた。
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