偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「……!」

私の言葉を封じるように唇が重なった。
ちゅっ、ちゅっ、と何度も唇を啄まれ、知らず知らず、はぁっと甘い吐息が口から落ちていく。

「……!!」

開いた唇の隙間から、ぬるりと彼が侵入してきた。
押しのけようと彼の胸を押したけれど、その手は易々とベッドに縫い留められてしまう。

くちゅり、くちゅり、と淫靡な水音が静かな部屋の中に響きだす。
しばらくは足をばたつかせて抵抗をしていたものの、そのうち身体からは力が抜けていく。
私がおとなしくなった頃、ようやく唇が離れた。

「お前は今日から俺のものだ。
隅から隅まで、俺のものにする」

無機質なレンズの向こうに見える瞳は、熱く燃えている。
好きでもなんでもない人に抱かれるなんて嫌だ。
けれど買われた私は、彼に従うしかない。

「さっさと終わらせてください」

もう抵抗するのはやめた。
これが私のハジメテだなんて情けなさ過ぎるが、二十八にもなって後生大事に持っておくものでもない。
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