偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「おお、こえぇ」

けれどそれは危なげなく、彼にキャッチされた。

「気が向いたら来い」

投げ返された枕が足下に落ちる。
彼が寝室を出ていき、バタンとドアが閉まってひとりになった。

「え?
は?
え?」

あの人、私にキス、した?
でもこれは、金で買われた関係、で。
愛なんてそこにないはずなのだ。
なんで御津川氏が私を買ったのかはわからないけど。

「これからどうなるんだろう……」

貯蓄は騙し取られて、ない。
会社も寿退社したから働くところもない。
明日にはいまのマンションを出ていかないといけないから……。

「あーっ!」

そうなのだ、マンションの退去日は明日。
鈴木と新婚生活用に買った部屋へ引っ越すことになっていた。
けれどその部屋が存在するとは思えない。
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