偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
お辞儀をして、部屋を出た。
携帯を出し、メッセージを送ろうとLINEを立ち上げる。
けれどあのあと、様子を訊こうと入れたメッセージは既読にすらなっていなかった。
通話ボタンをタップしたけれど、応答無し。

「まさか、ブロックされてる……?」

家元の気持ちがよくわかる。
こんなことでいきなり、ブロックだなんて。
あとから、私が冷たかったから彼女は辞めたのだ、なんて話を聞いたときには、本当にどうしていいのかわからなかった。

「もういい、帰ろ……」

今日は働きすぎたのか、あたまがくらくらする。
ふらっと歩きはじめたところで、前から来た男にぶつかった。

「あ……。
すみません」

あたまを下げたけど、相手は私の腕を掴んだまま放してくれない。

「あの……?」

「顔色が悪い。
少し休んだ方がいい」
< 9 / 182 >

この作品をシェア

pagetop