オフィスラブはじまってました
 



 休みなのに、わざわざ出勤するほどの用事でもなかったな。

 そんなことを思いながら、アパートに帰ってきた檜村柚月(ひむら ゆづき)は、隣の部屋の前にいた大家の澄子(すみこ)に、

「おや、お帰り。
 ちょうどよかった。
 いい子入れといたよ」
と言われ、にやりと笑われた。

 いい子ってなんだ……と思っていると、澄子が、
「たまたま、その辺をぼんやりして、人の良さそうな、あんた好みの顔の子が歩いてたからさ」

 捕獲しといた、と言う。

 俺好みの顔って、なにが基準だ……と思っていたら、

「ほら、あんたんちの庭に今もあるちっちゃいとき座ってた椅子。
 あれについてるキャラクター、あんた大好きだったろ」
と澄子は言い出す。

 澄子と柚月は親戚だった。
< 16 / 576 >

この作品をシェア

pagetop