オフィスラブはじまってました
「そういえば、実家からちょっと走ったところに、いい鮎料理のお店があったんですよ」

 ほう、と相槌を打つと、
「山の中で、エアコンも仕切りもなくて、窓が全部開け放してある畳敷きの広間みたいな感じの店で。

 すごく雰囲気がいいんですよ。

 ちょっと味の方は記憶にないんですが」

 いや、まず、味を記憶しといてやれ……。

「そういえば、その店の鮎の塩焼き、半分に割った竹に入ってまして。
 花とか添えられてて素敵だったんですよ。

 味は思い出せないけど、いい店なんです」

「ほんとうにいい店なのか、その店は……」

 いやいや、ほんとに、と笑ったあとで、ひなとは言った。
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