オフィスラブはじまってました





 結局、魚屋は謎の鮎の店の話を聞いているうちに通り過ぎ、肉屋の前でコロッケを買う。

「美味しいんですよ、此処のコロッケ」

「もうご飯作らなくてよくないか……?」
と一人分ずつ包んでもらったコロッケを店先で食べながら言ったとき、ひなとが手を叩き、言い出した。

「あっ、そうだ。
 実家といえば」

 実家といえばって、何処から実家出てきた。

 ああ、さっきの鮎の話か。

 何分前だ、と思っていると、ひなとが叫ぶ。

「そうですよ。
 私、実家に帰って近世のノートをとってこないと行けなかったんですっ」

「そうなのか?
 じゃあ、天気がいいから、ドライブがてら乗せてってやろう。

 途中でなにか食べたらいいんじゃないか。

 ……鮎以外」

 そう柚月は言った。





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