オフィスラブはじまってました
結局、信号機を手にひなとたちは柚月の実家まで歩いていった。
木陰の気持ち良さそうな場所にある、あのハムスターの椅子を見ながら、玄関を入り、リビングに行くと、たまたま柚月の両親と祖母がいた。
柚月が、
「ごめん。
車一台貸して。
今日は……そうだな、ファントムで」
と言うと、ソファで雑誌を読んでいた柚月の母、比呂子が、
「ふたりで何処行くの?」
と訊いてくる。
「いや、ちょっと、ひなとの実家に行ってくるだけなんだけど。
大学のときのノー……」
ノートがいるらしくて、と柚月が言い終わらないうちに、
「まあっ」
と比呂子が立ち上がる。