オフィスラブはじまってました
日当たりの良いリビングで、
「ありがとう。
おいしそう。
比呂子さんと逸子さんによろしくね」
といただいたケーキを出しながら、景子が言う。
向かいのソファに座る景子は、そのままニコニコと黙ってふたりを見ている。
……口数の多いお母さんにしては珍しいな、と思いながら、ひなとが、
「今日は……」
と口を開くと、景子は身を乗り出し、智幸は椅子に背を押し付けんばかりに後退した。
「柚月さんと前の商店街に買い物に行ったんだよ。
コロッケおいしかった。
ほら、家探しに行ったとき、食べたじゃん、お肉屋さんの」
「……ああ、そう。
おいしいわよね、あのコロッケ」
と噛み合っているはずなのに、何処か噛み合っていない感じの会話を景子とする。
噛み合っていないと感じるのは言葉と景子の拍子抜けしたような表情が合っていないからだろうか。