オフィスラブはじまってました
「えっ? 出ていくんですか?」
と驚いてひなとは訊いたが、

「いや、出てはいかないよ。
 此処にいることが俺の幸せだ」
と田中は柵越しにご近所さんと話している柚月と入野を見ながら言ってきた。

「私もです」
と言って、ひなとも笑う。

 黄昏色の空に、肉のタレの焦げるいい匂いが漂いはじめ、やがて、閉じられていた201号室の窓が開いた。

 澄子と秀継が仲良く詩吟を唸りはじめる。

 それをご近所さんたちも一緒に見上げながら、みんなで楽しく一杯やった。







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