オフィスラブはじまってました




「も、もう一杯、いかがですか?」
と言われながら、柚月は思っていた。

 一人暮らしの女性の部屋にあまり長居をしてもな、と。

 いやまあ、一人暮らしの女性の部屋、というのがピンと来ない部屋ではあるのだが。

 寝袋が隅にあって、大きな家具もないせいだろうか。

 いまだ空室か、キャンプ場のような感じなのだが……。

 そう思いながらも、柚月は言った。

「いや、そろそろ失礼しよう。
 まだ用事があるのなら手伝うが」

 用事かあ、という顔をしたひなとが、キッチンを見て、棚の方を見て、床を見た。

「はい、もう大丈夫です」
と笑ってひなとは言うが、

 いや、お前、今、明らかに、あれとこれとそれがないなと思ったろ、と思う。
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