オフィスラブはじまってました




 それから仕事をしていると、部長のデスクの電話が鳴りはじめた。

 部長も課長も他の人もいない。

 この電話、とっていいんだよね?
と思いながらも、緊張する。

「なにしてるんだ、早く取れ、新人!」
と力強い声がしたと思ったら、藤田だった。

 伝票を手にした彼は経理部に行こうとして、たまたま通りかかったようだった。

「いや、あんたも新人……」
と言いながら、緊張のあまり唾を飲み込み、電話を取る。

「は、はい。
 人事部です」

「企画部の檜村(ひむら)ですが」
と相手は名乗った。

「はい、お疲れ様ですっ」
と反射的に言いながら、

 これ内線電話だよね?
 こういうとき、なんて言ったらいいんだっけ?

 外線電話の対応しか記憶がないんだが、とひなとは怯える。
< 81 / 576 >

この作品をシェア

pagetop