オフィスラブはじまってました





「檜村、この間のカフェ行かねえ?」

 昼休みも近くなった頃、同期の水橋渉(みずはし わたる)が部署に来たついでにそう言ってきた。

 生真面目な自分と、チャラい水橋と、何故だかわからないが、入社当初から気が合った。

 正反対だから、逆に合うのかもしれないが。

 ……そういえば、あの秋本ひなともそうかな、と柚月は思う。

 自分とは正反対のキャラだと思うのに、気がついたら、二日に渡り、あいつに付き合っている。

 昨日も大の字になって寝ていたひなとが起きてきて、お茶にしようというので、お土産をもらいつつ、またフェンス越しにお茶をしていたら。

 いつのまにやら、ふたりで布団を買いに行くことになっていた。

 ひなとが言い出したのではない。

 のんびりペースのひなとに引っ越しの主導権を握らせておくと、この引っ越しは永遠に終わらない気がしたからだ。

 あいつ、部屋の荷物がそろうのは、きっと、あの部屋を出て、次の部屋に引っ越すときに違いない、と思っていた。
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