オフィスラブはじまってました
「まあ、いいことなんだが。
 そのせいで、出てく住人も多くて。

 家建てたり、結婚したりで」

「あのー、もしかして……」

「私がこのアパートの大家だよ。
 どうだい? あんた住んでみないかい?

 住むと必ずいいことがあるハッピーエンド荘だよ」

 ……名前がすごいな。

「住んだら、結婚が決まるよ」

「いやあの、私、就職したばっかりなんで……」

「あんた別嬪(べっぴん)だからすぐ決まるよ」

 そう言っていただけて嬉しいが。
 顔で決まるだろうか、結婚……。

 っていうか、顔で決まったら、それは、このアパートのおかげではないのでは……?
と思いながらも、

「さ来月、妹のところの孫が結婚するんだよ。
 結構お祝い出さなきゃいけないんでね」
と言うおばあさんの迫力に押され、今にも決まりそうだったが、とりあえず、抵抗してみて、

「あの……、とりあえず、部屋拝見させてもらってもいいですか?」
と言ってみた。



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