極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

54.社長の厳しさと優しさに胸がきゅんとします

 すぐに逢坂が言葉をつけ足す。

「おいおい。基本は君ひとりで進めてもらうが、ヘルプがないとは言っていない。ここにいる全員、君の助けになる。そう萎縮するな」

「全員……?」

 見渡すと、有吉以外のリーダーがトゲトゲしい表情を向けてくる。
 本当に助けになってくれるのだろうか?
 案の定、高木から辛辣な言葉が投げかけられた。

「悪いけど、つまらない質問とかはしないでね。自分で調べて、本当にわからないことだけ訊いてちょうだい」

 悠木と橘は無言のまま、じっとちひろを見てくる。
 高木のように、嫌味のひとつでも言ってくれたほうがまだマシだ。

 ちひろの額から、滝のように冷たい汗が流れる。

(私に、そんなことできるの? どうしよう……無理だって断ったほうがいいかな……)

 小さく震えていると、高木が意地の悪い顔を向けてきた。

「あら? 自信がないの? だったら最初からできないと言ったほうがいいんじゃない? フィッティングのときみたいにね」

 そのひとことが、ちひろの矜持を鋭く引っ掻いた。

(できないなんて言葉を、安易に使いたくない。あのときと今では心境が違う。私は仕事から逃げたりしたくない!)

 逢坂は、ちひろに知識と経験を与えてくれた。
 ミスをしたら助けてくれ、上手くできたら褒めてくれた。
 できの悪いちひろを、逢坂は長い目で見てくれた。

 彼の温情に報いるためにも、ここは気合いでもなんでも入れて、真剣に頑張りたい。
 血走った目を向けるちひろに、逢坂がふうと嘆息する。

「無理ならば……」

「や、やります……!」

 ちひろの声は、焦りと緊張と不安で、震えていたかもしれない。
 顔だって背中だって脇下だって汗だらけで、ちょっと必死過ぎる形相だったかもしれない。

 でも、ここははっきりと意思表示をしたかった。

「やります。やらせてください!」

 少々……いや、かなり勢いよく叫んだからか、空回りしたみたいで高木や悠木が鼻で笑う。

「そんなに大声で叫ばなくても聞こえている」

「……すみません」

 逢坂が立ち上がると、ちひろの肩にポンと手を置いた。

「気負うのはいいが、何もかもひとりで取り組もうとしないように。困ったことがあれば、すぐ相談しなさい。わかったな?」

 サングラス越しに彼の心配げな表情が見えて、ちひろの胸がキュンとしてしまう。
 こんな風に労りの声をかけられると、彼に尊敬以上の気持ちがわき上がってしまい、心臓が激しく高鳴ってしまう。

「ありがとうございます」
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