極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

56.逢坂社長と長谷川さんの関係性

「頑張れそうならいいわ。この業界未経験だったでしょ? ちょっと心配だったのよ」

「なんとかやれています。今日も大変なお仕事依頼されちゃって……ほかのひとからしたら、たいしたことないんだろうけど、私からしたら難しくて」

 えへへ……と愛想笑いをしながら頭を掻く。

「逢坂先輩は昔から後輩の面倒見がいいの。あなた、きっとうまくやれるわよ」

 長谷川が逢坂のことを社長ではなく、先輩と呼称したので首を傾げる。

「先輩?」

 長谷川は、逢坂の後輩なのか?
 ちひろが疑惑の目を向けると、長谷川がふふっと笑った。
 美人なのに親しみやすい表情で笑うから、そこに可愛いらしさも加わってしまう。

「ええ。大学時代のね」

「大学時代の? え? 逢坂社長は四十五歳だと聞いていましたけど」

 ということは少なく見積もっても長谷川は四十歳前半となる。

「ええ。今年四十二歳。ごめんなさいね、割と年を取っていて」

「い、いえっ……もっと若いと思っていました」

「あら、お世辞でも嬉しいわ」

 取り繕うちひろに気を遣ったのか、長谷川が照れくさそうに笑う。
 事実、ちひろは四十歳未満だと思っていたので、お世辞ではないのだが。

「逢坂先輩から、若くて活きのいい女の子がきたら紹介してくれって頼まれたの。何か困りごとがあって逢坂先輩に言いにくいなら私に言ってくれてもいいわよ」

「ありがとうございます。はは……」

 長谷川が「逢坂先輩」と口にするたびに、針で刺されたみたいに胸がチクリとする。
 ちひろは何に対して胸が痛むのか、さっぱり理解できなかった。

(大学の先輩、後輩って……ここまで関係が続くもの? あえて、どちらかが縁を切らないよう心がけないと、どこかで疎遠になってしまいそうなものだけど……)

「じゃあ、私はこれで。逢坂先輩によろしくね」

 長谷川が立ち上がった拍子に、来客室の扉がガチャリと開いた。
 扉の向こうから逢坂が現れ、長谷川を見て嬉しそうな顔をする。

「おう。長谷川か。きているなら、おれに声をかけろよ」

「逢坂先輩。お久しぶりです。ちょっと寄っただけですよ」

 大学時代からのつきあいがある相手は特別なのだろうか。
 ふたりの親密さに、なんだか蚊帳の外に置かれたような気分になる。

(蚊帳の外どころか部外者だもんね。当たり前か。でも……)

 逢坂と長谷川は、ふたり並ぶととてもいいカップルのように見えた。
 その感情が、ちひろの心の奥に燻る何かを刺激する。

「では逢坂先輩。また人材不足になったら連絡ください」

 会釈する長谷川に、逢坂が軽く手を振った。

「そうそうハロワの世話にはなりたくないがな。ちひろの件はありがとうよ」

「いいえ。中杢さん。お仕事頑張ってね」

「はい。頑張ります」

 彼女を見送ると、逢坂は早々に会議室へと戻っていった。

(まだミーティング中だったの? もしかして長谷川さんに会うために抜け出してきた?)
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