極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

61.イケメン営業さんと食事の約束

「もしよければ助言しようか? ぼくの経験と知識で、ちひろちゃんの企画商品、もっとよくなると思うよ」

 有吉は花がこぼれ落ちるように微笑むと、何かを企むように目を細めた。
 だがちひろは、まったく作為的な笑みに疑惑を抱かない。

「本当ですか? お願いします」

 有吉がニヤリと口角を上げた。

「いいよ。でも交換条件があるけどね」

「交換条件? 私にできることなら」

(なんだろう? うーん……無茶な要求じゃなければいいけど)

 有吉の出した条件は、ちひろにとってそれほど意外でもなかった。

「今度一緒に、食事へ行くなんてのはどう?」

「わかりました。いいですよ」

 二つ返事でOKを出したからか、有吉が拍子抜けという顔をした。

「いいの?」

「はい! ご飯を奢ればいいんですよね?」

「え?」

 有吉の麗しい美貌が、崩れるほどに驚いている。
 何かおかしいことでも言っただろうか?

「助言を貰う代わりに、何か美味しいものを奢るんですよね? タマゴサンドの美味しい店がこのあたりにあるって聞きました。どうですか?」

「タマゴサンドって……ちひろちゃん、食事ってランチのことを言っている?」

「ええ。あっ……タイヤキもつけますよ。お腹いっぱいになると思います」

 ちひろは真面目に返したはずだが、有吉は複雑そうな顔をしている。

「うーん……うまく躱されたのか、それとも天然なのか……判断つきかねるなあ」

「天然? どういう意味ですか?」

 上の階から、笑い声のようなものが聞こえてきた。
 ちひろは、まだ誰か残業しているひとがいるのかと特段気にしなかったが、有吉は腕を組むとうーんと唸る。

「ちぇっ……守護されているなあ。まあ、いいや」

 有吉は隣の椅子に腰掛けると、デスクの上に散らばっていた企画書を取り上げ、一枚一枚丁寧に目を通した。
 先ほどまでのチャラい感じとはうってかわって、真剣な眼差しで凝視している。

 その間、ちひろは大人しくし、彼の集中力を途切れさせないよう配慮した。

「ねえ、ちひろちゃん。この数字の算出データ元ってどれかな?」

 彼が指で弾いた数字を見て、ちひろはすぐにパソコンのデスクトップに保存してあった表計算ファイルを開いた。

「ええと……二年前に似た商品を企画開発していて、それを参考元にして算出しました」

「あーそれだと思ったよ。それね、仕入れ値が過剰なんだ。空輸便使っちゃったからね」

「空輸便?」

「そ、急いでたから飛行機で運ばせたの。船便と違って倍の発送コストがかかる。仕入れ値が正確じゃなくなるから、その数字の半分にして……」

 さすが営業といったところか。
 有吉は数字面のチェックに厳しく、かかるコストを現実的なものに近づけることができた。

「ありがとうございます」

 その日は有吉に、終電まで企画書のチェックをしてもらった。
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