翠玉の監察医 日出づる国
「今は知らなかったとしても、いつか真実を知ってしまう時は必ずやって来ます。真実をねじ曲げることはできません。ならば、私たちが伝えるだと思うのです」

蘭はそう言った時のことを思い出し、ブローチを握り締める。そして法医学研究所に戻るため、小向工場を後にした。



ミゲウの事件から数日、世間は多くの外国人労働者が殺害されたニュースに騒ついていたが、もう事件のことが報道されることはなくなった。

「リヴィアさんたち、もう事件は報道されていないですし、早く心が落ち着いてくれるといいなぁ」

法医学研究所の部屋でニュースを見ながら圭介が呟く。部屋には碧子と蘭、そして圭介が残っていた。残業をしているのだ。ゼルダたちは定時で帰った。

「深森くん」

書類を書き終えた碧子が顔を上げる。その目はとても悲しげに揺れていた。圭介の心がギュッと締め付けられる。

「理不尽な暴力によって家族を失った人たちにとって、事件は永遠に終わらないのよ」
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