年下ピアニストの蜜愛エチュード
その後も、会話は意外に弾んだ。
イタリアにいる彼の家族のこと、通っていた音大のこと、来月から半年に渡って世界各地でリサイタルを行なうこと、そのためツァー前にひと月の休暇をもらっていること。引っ越したばかりで荷物整理に追われていること。
千晶も口数が多い方ではないが、アンジェロとのおしゃべりは楽しかった。
食事を終えて店を出た後も二人はまだ話し続けていて、やがて健診センターでのことも話題にのぼった。
「あの時、三嶋さんがいい看護師さんだってことはわかったんです。採血も上手だったし、ずっと僕に気を遣ってくれていたでしょ? だから謝りたかったけど……できなくて、そんな自分にまた腹が立って……すみませんでした。本当に」
「もう謝らないでくださいってば。気にしていませんから」
「すみません。僕ばかりしゃべってますよね。三嶋さん、聞き上手だから、すごく話しやすくて」
千晶は苦笑しながらも、この状況になんとなく合点がいった。
アンジェロは、自分が看護師だから安心しているのだ。人付き合いが苦手なのに故郷を離れて、きっととても心細かったのだろう。
不機嫌になったのは不安だったからで、そんな時にも丁寧な対応をした千晶が味方に思えたのかもしれない。だから彼なりのお礼のつもりでパーティーに誘ったり、高価な洋服を揃えてくれたりしたのだ。
(……そういうことね)
今夜のパーティーが終われば、アンジェロはまたスポットライトの当たる世界へ、そして千晶は慌ただしい日常に戻っていく。それは当然のことだし、もう十分満足だった。
(だって、あこがれのアンジェロとデートっぽいことができたんだもの)
少し先の角を曲がれば、アンジェロの住むレジデンスの前に出る。彼は着替えのために家に帰り、千晶は『ジェラテリア・チャオチャオ』に戻って、パーティーが始まる前に合流することになっていた。
イタリアにいる彼の家族のこと、通っていた音大のこと、来月から半年に渡って世界各地でリサイタルを行なうこと、そのためツァー前にひと月の休暇をもらっていること。引っ越したばかりで荷物整理に追われていること。
千晶も口数が多い方ではないが、アンジェロとのおしゃべりは楽しかった。
食事を終えて店を出た後も二人はまだ話し続けていて、やがて健診センターでのことも話題にのぼった。
「あの時、三嶋さんがいい看護師さんだってことはわかったんです。採血も上手だったし、ずっと僕に気を遣ってくれていたでしょ? だから謝りたかったけど……できなくて、そんな自分にまた腹が立って……すみませんでした。本当に」
「もう謝らないでくださいってば。気にしていませんから」
「すみません。僕ばかりしゃべってますよね。三嶋さん、聞き上手だから、すごく話しやすくて」
千晶は苦笑しながらも、この状況になんとなく合点がいった。
アンジェロは、自分が看護師だから安心しているのだ。人付き合いが苦手なのに故郷を離れて、きっととても心細かったのだろう。
不機嫌になったのは不安だったからで、そんな時にも丁寧な対応をした千晶が味方に思えたのかもしれない。だから彼なりのお礼のつもりでパーティーに誘ったり、高価な洋服を揃えてくれたりしたのだ。
(……そういうことね)
今夜のパーティーが終われば、アンジェロはまたスポットライトの当たる世界へ、そして千晶は慌ただしい日常に戻っていく。それは当然のことだし、もう十分満足だった。
(だって、あこがれのアンジェロとデートっぽいことができたんだもの)
少し先の角を曲がれば、アンジェロの住むレジデンスの前に出る。彼は着替えのために家に帰り、千晶は『ジェラテリア・チャオチャオ』に戻って、パーティーが始まる前に合流することになっていた。