可愛くないから、キミがいい【完】





好きになって欲しくない部分まで、いーなと思われてしまっている。それは、最悪だ。だけど、仕方ないのかもしれない。

それに、どうしてか、そのことに今、すごく安堵してしまっているのだった。


だけど、口からは「長いんですけど」なんて、また、文句が飛び出す。そうやって、文句ばかりが口をでていくのは、和泉しゅうへの甘えからくるものだと、なんとなく自覚しはじめていた。



いつの間にか、また泣いている。

これでは、本当に泣き虫だ。



「長くて悪かったな。でも、理由なんてあるようで、ねーのかもな。ふつうに、ただ、お前のこと、好きになっただけ」


和泉しゅうが、窮屈そうに背を屈めて、目線をあわせてくる。私の顔をのぞきこむようにして、少しだけ首をかしげてきた。



「今まで一回も告ったことがねーから、いまいち、分かってないけど」

「………ふぅん」

「あってんの? これ」



真剣にそんなことを聞いてくる。


馬鹿じゃないの、と思いながら、愛しさが溢れてしまって、無意識に和泉しゅうの頬に手を伸ばしてしまった。

だけど、途中で我に返り恥ずかしくなって、
触れる前に下ろす。

その手はすぐに和泉しゅうに捕まって、
指と指が、絡まった。



< 317 / 368 >

この作品をシェア

pagetop