可愛くないから、キミがいい【完】





ミーナとマユとなほちんには、和泉しゅうと付き合い始めたことをすぐに打ち明けた。


みんなすごく吃驚していた。

マユは『そろそろ私もコウタ君にオッケーしようかな』となんだか、コウタ君のとの恋にやる気を出していたし、なほちんなんかは、『略奪したの?』なんて失礼なことを聞いてきた。

和泉しゅうと、正式に付き合うことになった日の夜、家で、和泉しゅうの元カノのSNSを確認したら、画像も動画も消えていた。

全部、とも君の勘違いだったわけだけど、諸々のことをみんなに説明するのも面倒だったし、この世に和泉しゅうと私しか知らないことがあってもいいかもしれないと思って、えへへどうだろう、と笑って誤魔化しておいた。




結局、和泉しゅうが、私の高校まで来たのはあの日だけで、あとは、また、駅で待ち合わせる日々に戻っていた。

違うのは、スイーツを理由に誘ってくることが減ったことだけだ。その代わりに、<放課後、ひま?>と、相変わらず絵文字も何もない素っ気ないメッセージが送られてくる頻度が高くなった。



今日は、私の方が先に駅に着いたみたいで、
駅の構内に和泉しゅうの姿はまだない。

前髪を整えながら改札から少し離れた所で待つ。


<着いたから、はやくしてよ>と、文句だけ送って、しばらくSNSを確認していたら、「ねえ」と、いきなり声をかけられる。


不透明ではないテノール。この声は、和泉しゅうではないなと思いながら、顔をあげる。







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