先生がいてくれるなら②【完】

「お仕事、忙しいの?」

「まぁ、それなりに」

「食事と睡眠は? ちゃんととれてるの?」

「……まぁ、一応」


母親って言うのは、子供がいくつになっても心配ばかりするのが仕事らしい。


俺がどれだけ「大丈夫だ」と言っても、滅多に顔を出さない俺の心配ばかりしてる。


大丈夫、死なない程度にちゃんとやってるよ。


最近は立花が週末毎に家に来てくれるから、ちゃんと飯も食ってるし。


「ねぇ孝哉。今日連れてきたお嬢さんなんだけどね。可愛らしい人ね?」

「……うん、まぁ……」

「それで、結婚は、いつするの?」


──は!?


いきなり話が飛びすぎだろう!


「……母さん、あいつ、まだ学生だから」


まさかアイツが高校生だとは、思ってないだろうなぁ。


「あら、そうなの……。でも、早めにしなさいね? 素敵なお嬢さんだから、誰かにとられてしまうわよ?」


それは俺も危惧している所だ。


とりあえずライバルが校内だけでもウヨウヨいる事を考えると、俺だって内心気が気じゃ無い。


「まだ早いよ。アイツが社会人にならないと……」


俺の言葉に、母は残念そうに「そうなの……」と小さくため息を吐いた。


俺だって残念だよ、そもそもあいつが社会人になるのなんて何年も先なんだから……。



そんな俺と母のやり取りをニコニコしながら見ている広夢……。


こいつ、きっと立花が俺の教え子だって気付いてるな。


余計なことを言わないように後で釘を刺しておかないと。



はぁ、厄介事がどんどん増えてる気がするのは気のせいか……?


でもまぁ、とりあえず親父との約束は果たした。



これでしばらく放っておいてくれると助かるんだが──。


< 218 / 354 >

この作品をシェア

pagetop