先生がいてくれるなら②【完】

5月──。


大型連休が明け、爽やかな風が吹くある日の、放課後の事だった。


携帯に光貴先生からの着信があり、大学病院に呼び出され、いま病院の会議室に光貴先生と一緒にいる。



「ごめんね、どうしても緊急で確認したい事があって」



私に微笑みかける光貴先生は、珍しくいつもよりも少し強ばった表情だった。


「大丈夫です。あの、確認したい事って、何ですか?」

「うん……これなんだけどね」


そう言って白衣のポケットから取り出したのは、見覚えのある──ボイスレコーダーだった。




見覚えが──ありすぎて、吐き気がする……。




明らかに青ざめた私の顔を、光貴先生は少し目を伏し目がちにして見つめている。



「見覚え、あるんだね」



私は小さく頷いた。



「立花さん、これの持ち主の事って、何か知ってる?」



持ち主……。


このボイスレコーダーの持ち主は……。



でもその前に──


< 307 / 354 >

この作品をシェア

pagetop