竜使いの少女が恋したのは王子様でした【完】
 それから毎日、仕事が終わる頃になると、オルヴォはうちを訪れるようになった。別にどこかへ行くわけじゃない。仕事が終われば、食事の用意もあるし、私には暇な時間なんてない。ただ、オルヴォは、自宅から採れたてのおいしい野菜と、綺麗に咲いた花などを持って訪れ、一緒に料理をして一緒に食べて帰る。

これ、お父さんはどう思ってるんだろう。

一緒に仕事をして、帰りに寄ってくなら、まだ分かるけど、わざわざ毎日うちに来て、一緒に食事って、絶対変だと思ってるはず。

なんで、何にも言わないの?

だけど、そんなこと、父に直接聞くこともできず、かと言って、オルヴォに来ないでとも言えず、私は毎日居心地の悪い夕食を食べていた。


 あれからオルヴォは、特に何か言ってくるわけじゃない。まるで子供が毎日無邪気に遊びに来るように、うちを訪れ、一緒に台所に立ち、父も一緒に食事をして帰っていく。何も言われないから、何かを断ることもできない。

困ったなぁ。



 そうして3ヶ月が経ち、短い夏が終わりを告げた頃、マリッカおばさんが秋植えの花の苗をお裾分けに来てくれた。

「今植えたら、春には綺麗な花が咲くからね」

そう言って、毎年、たくさんの苗をくれる。

「ところでレイナ、オルヴォとはいつ結婚するんだい?」

「えっ?」

「もちろん、ウェディングドレスは、私に縫わせてくれるんだろ?」

マリッカおばさんは、嬉しそうにニコニコと尋ねる。

「オルヴォは優しいいい男だからねぇ。
 長男だけど、ペルッティもいるし、婿にくれって言っても、ヤーコブも反対はしないだろ。
 エルノも、ほっと胸を撫で下ろしてるだろ?」

マリッカおばさんは、1人でうんうんと満足げに頷いている。

「え、あの、違うよ。
 私とオルヴォはそんなんじゃ……」

私は慌てて否定する。けれど……

「そんなに照れなくても大丈夫。
 みんな通る道だよ。
 レイナが春には花嫁になれるように、私も冬の間にドレスを仕立てておこうかね」

マリッカおばさんは、全く信じてはくれないまま、帰って行った。


どうしよう。

マリッカおばさんの口ぶりだと、きっとみんな私とオルヴォが付き合ってるって思ってるんだよね?

でも、1人1人に違いますって言って回るわけにもいかないし。


< 27 / 39 >

この作品をシェア

pagetop