ぜんぶ欲しくてたまらない。



「うわぁ……人いっぱい」



コウくんは人混みが苦手だったっけ。


入場口に並ぶ人の多さにそんな言葉をこぼすコウくん。


わたしが選んだ場所はたくさんの人で賑わう遊園地。



「ちょっとチケット買ってくるからコウくんは待ってて」



チケット売り場はさらに混んでいて、コウくんを連れて行くのは嫌がるかもしれないとひとりで行くことにした……のだけれど、


「……?」



突然手首をギュッと掴まれて、足を止められる。



「俺が買いに行くから芽依は待ってて」


「え、でも……」


「いいから」



そう言ってコウくんは足早に行ってしまった。


コウくんが自ら行くなんて……どんな心変わりだろう?


人の邪魔にならないようにと、人が少ない壁際に寄ってコウくんの帰りを待っていた。



コウくん遅いなぁ。


そんなに混んでるのかな?



コウくんのことだから可愛い女の子に絡まれてるとか?



なんだか心配になってきたわたしは、チケット売り場へ行ってみることにした。




< 122 / 261 >

この作品をシェア

pagetop