ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

うちの学校の制服はブレザーだから、こうして学ランを着ている姿は新鮮だ。

普段爽やかな印象の強い康晴だけれど、衣装をかっちりと着こなしているからか、いつもより男らしさを感じられる。


「あとで写真撮らせてね」

「やだよ。恥ずい」


即答されてしまい、わたしはちえ、と口をすぼめた。

——途端、あたりが一層盛り上がった。

おもわずひょこっと腰を上げてグラウンド内を覗くと、綱引きの決着がついたようだった。

少し興奮気味の実況が、「紅組の勝利です!」と叫ぶ。

入退場の音楽が流れ出し、1年生が退場門に流れていくと同時に、待機列がゆっくりと動き出した。

歩きながら、美月がチラリと後ろの康晴を気にするような仕草を見せて、わたしの耳元に口を寄せた。


「……おーちゃん、来れたらよかったのにね」


突然振られた話題にドキリとする。
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