ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


——足の怪我が完治してからというもの、わたしは以前より頻繁に、お姉ちゃんのところへ足を運ぶようになっていた。

学校帰りだったり、今日みたいに休みの日に予定が合えば、おーちゃんとふたりで様子を見に行ったりしている。


「今度、お姉ちゃんの本を数冊持って行きたいから、一旦、家に寄るね」

「わかった」


わたしたちはバスを降りると、途中でスーパーに立ち寄った。

買い物を済ませて、マンションまでの道のりを並んで歩く。

行き先が病院だとしても、こうしてお休みの日に、おーちゃんと一緒に過ごせる時間が増えるのは嬉しかった。


デートらしいデートは、まだしたことがないから……。

付き合ったら、色んなところに行きたいな。

お決まりの遊園地とか、映画館とか、水族館とかで……手を繋いで……。


誰もが一度は夢見るデートコースを想像して、わたしはひとりで目を輝かせた。

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