ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



***



「愛花、携帯鳴ってるよ」


お昼休みになるなりトイレへ向かったわたしが教室へ戻ると、先にお弁当を広げていた美月が、ん、とお箸で机の上を指した。

確かに、携帯が振動している。

すぐに鳴り止まないそれは、メッセージではなく、着信を知らせるものみたいだ。


こんな時間に……誰だろう。

おーちゃんかな?

よっぽど急ぎのことではない限り、いつもはメッセージで済ませるのに……。


不思議に思って携帯を手に取ると、画面に表示されている予想外の名前に、わたしは目を丸くした。


「叔母さんからだ……」


わたしの呟きに、美月が首を傾げる。

滅多にない出来事に、わたしはなんだか、……ひどく胸騒ぎがした。

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