ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
ふわふわに巻かれた髪。
甘い香りの香水。
細い指に、綺麗なネイルが施された爪。
華奢なのに、どこか色気を感じさせる大人な雰囲気。
……なにもかもが、わたしとは違う。
『自分よりずいぶんと大人な人と——』
美月の声が、頭の中で反芻された。
こういうことか。
と、わたしはどこか冷静に納得してしまった。
——敵わない。
おこちゃまなわたしなんて、この人に、敵いっこない。
おーちゃんのいる世界は、わたしのいる世界より、ずいぶんと広くて、遠くにあるんだ。