ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「……わたしと仲良くしたいんだって。きっと杉本さんはおーちゃんのことが好きだから、妹の、わたしと……」


言いかけて、わたしは言葉を続けられなかった。

ぐす、と音を立てる。


「俺、前にも言ったろ。杉本さんのこと、なんとも思ってないよ」

「でも、……大人っぽいし、キレイだし、セクシーだし……」

「……」


——否定、しない……。

やっぱり、魅力的だって思ってるんじゃん。


黙ってコーヒーをすすっているおーちゃんに、わたしはまた泣きそうになる。

シャツの袖を引っ張って、目頭に押し当てていると、


「……あのさ」


おーちゃんが突然立ち上がって、わたしの目の前で向き合うようにしてかがんだ。

いつもわたしを見下ろしている瞳が、今は上目遣いにわたしを射抜く。


「俺はさ、……ほんとにお前のことが、大事なんだよ」


そう言ったおーちゃんは、穏やかな口調だったけれど、どこか苦しそうに見えた。
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