転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
(なんだこれは……どうして俺は、こんな夢をみているんだ?)


 わからない。そもそも夢なんて、一貫性のない不明瞭なものだとわかってはいるけれど……それでも春人は、妙に胸がざわついて仕方がなかった。

 唇を噛みしめて黙り込む。そこで初めて男が、それまでずっと合わせていた視線をつい、と春人の斜め後方へとずらした。


《そして彼女が──俺とおまえが、世界で1番大切に想っている存在》
「………なに?」


 男のつぶやきに、思わず声を漏らして視線の先を追う。

 ……いた。紅茶色の長い三つ編みに青いワンピースを身にまとったいつもの“彼女”が、いつものようにこちらに背を向けてそこに佇んでいた。

 そうして、春人は考える。先ほど男が放った言葉の意味を。


(『おまえ』……つまり俺が、世界で1番大切に想っている存在──?)


 ひゅ、と息を吸い込む。
 たぶん、反射的にその名前をつぶやいていた。
 彼女がゆっくりと、こちらを振り返る。


《はると》


 彼女の口から自分の名前が紡がれたことに、大きく目を見開く。
 そして、肩越しに見せてくれた花のようなその笑顔は、まさしく──……。


《“俺”は、叶えられなかった。だから、“おまえ”に託す》


 呆然とする春人を前に、男が僅かに口もとを緩めた。


《……今度こそ、おまえのすべてで●●を──》
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