夜には約束のキスをして

 今までと同じではないか。という言葉は、唇に触れた深青の人差し指に封じられた。

「今までとは違う。和真はもう、毎晩来なくとも、私が倒れることなどないと知っている……それでも、私は、和真と毎晩会いたい。だから、ちゃんとした約束がほしいんだ」
「深青……」

 だめか? と、上目遣いで小首を傾げられれば、その可愛らしさに、どんな我儘でも聞いてやりたくなる。もとより、拒否するつもりなど毛頭ないのに。深青は期待のこもった目でじっと和真の答えを待っている。
 恋しく想う少女に、毎晩会いたいなどと請われて、了承を与えるという行為は、なんと贅沢で傲慢な行いであろうか。好きなればこそ、請われずとも会いにいくし、己の了承など取り付ける必要もない。それでも、彼女が望むのなら、そのとおりにしてみせよう。そうやって、彼女との間に確かなものを一つでも多く積み重ねていきたい。心の底から願った。
 和真は、深青の両頬に手を当てて、その瞳を間近で見つめた。

「いいよ」

 ただ一言、承諾の意を告げる。そうして彼は、その約束の証とするかのように、羽根のような優しい口付けをほんの一つ、愛しい彼女に捧げた。

 この瞬間から、二人の夜の逢瀬は、曖昧な習慣などではなく、確かな約束となったのである。


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