ハッピーエンダー

「ルイくんがね、タワー入れたお礼に昼からデートしたいって。めっちゃ久しぶりなんだけど」

ルイくん。新人を育てたいと(のたま)う母親が半年前から目をつけているホストだ。育てたいとか上から言ってるのが笑える。要は、少ない金でも四十の子持ちとありがたがって寝てくれる男は、そいつしかいないんだろ。

「どっちがいい?」

原型がわからないほどの厚化粧をした母親が振り向き、両手にツギハギのような服をぶらぶらさせている。本人はまだ下着姿。俺は「ピンク」と答えた。

トイレの掃除を始める。ルイくんも母親も、高確率でここに吐き散らす。母親は掃除中の俺の背中にずっと話しかける。

「水樹さぁ、前に話したじゃん、アタシと寝るたび十万払ってくれる太客のこと」

またか。汚れた紙を放り込み、トイレを流した。その太客の社長さんとのおかしなプレイ内容を延々と聞かされると、俺はまた夜中、吐き気で眠れなくなるんだけどな。
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