ハッピーエンダー

そう言われ、私は眉を垂らしてうつむいた。こんな悲しいことを言わせてしまった。心が張り裂けそうだ。

「光莉がそんな顔すんなよ」

「普通のアルバイトは、できないんですか」

「できないね。何度もしたけど、母親が俺の給料前借りさせてくれってバイト先でわめき散らしに来るから」

どうして水樹さんの生活はこんなに八方塞がりなんだろう。なんとかしたいのに、なにもできない。

この一週間、水樹さんといて感じたけど、一緒にいてとても楽しいし、優しい。私の嫌がることはしない。この部屋に彼がいてくれて、私の陰鬱とした心は不思議と満たされているのだ。

「……お母さんが許せないです」

ポツリとつぶやき、ついに涙が出た。彼は驚いて目を開いている。

「なんで光莉が泣くの」

「わからない、なんか、悔しくて。涙が出てきました」

私が泣いたからだろうか。彼は私の体を引き寄せ、優しく抱きしめてくれた。頭を抱えて、そこに頬を擦り付けている。あったかい。初めて、男の人に抱きしめてもらった。心地よい。ずっとこうしていたい。

私たちはそれから、夜眠るとき、抱き合って寝るようになった。
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