ハッピーエンダー

私の胸はみるみるうちに期待で膨らみ、緊張で脚がモゾモゾと動いた。

「そ、それって……」

自分の声とは思えないほど甘く上ずった声が出て、頭を乗せている部分が熱くなっていく。すると、彼は手を伸ばし、私の頬を指でなでた。

彼は霞むように笑い、

「でも俺は一生、光莉とはセックスしないよ。そういう関係でいよう。な」

そう言った。

私が黙り込んでショックを受けていることを、彼はわかっていたと思う。「そうだろ?」と私を諭すような表情で、こちらの期待をすべて打ち砕くように。私たちは付き合わないし、セックスもしない。そう釘を刺された。

水樹さんを好きになっている私に、私より先に気づいたのだろう。

「……そう、ですね。私もです」

私は、自分の勘違いを反省した。絶対にこの関係を壊さない。水樹さんには恋人としての私など、必要ではないのだ。こちらも同じ。それを忘れたら、私たちは私の父や、彼の母のようになってしまう。

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